当店のある北海道室蘭市は、明治維新以降、工業都市として日本の近代化を支えてきた歴史があります。
しかし、米作りに向いている土地であるとは決して言えず、開拓に当たった先人達も、食糧に困った時代があったほどです。
今でこそ、おいしいお米の産地として、北海道はその名を馳せるようになりましたが、それでもこの室蘭では、お米の生産はごくごくわずかです。
では、米どころではないこの室蘭で、どうして111年も米屋としてやってこれたのでしょうか?
もちろん、皆様に支えられてここまで来れたのは、その通りです。そのことに対する感謝は忘れてはなりません。
その上で、111年を経た今思い返すと、
「米どころではないからこそ」というところがあったように思います。
ただ売るだけではなく
私としては、お求めいただいたお米を、より美味しくご賞味いただけるよう、お米についての情報をできるだけお伝えできるようにしたいと考えています。
ですが、ただお店にいて売るだけでは、その姿勢を全うすることができません。
米どころに当店がないからこそ、北海道内はもちろん、全国の水田を自らの目で見て確かめ、年々変化する作況と、そこにかける生産者さんの並々ならぬ努力を肌で感じ、それをお伝えすることが大切だと考えるようになりました。
産地を見て歩いた自信
そうして産地を見て、お米そのものについてはもちろん、各地の気候や生育条件、そしてそれに適した方法で作付けをする生産者さんの取り組みについて理解を深めるに至りました。
事実、この経験が、お届けするお米についてすべてをありのままにお伝えすること、そして自然への感謝の念につながり、111年もの間、皆さまに信用していただけるお店づくりの礎であると考えています。
そしてこのことが、年々厳しくなる経営環境の中でも、多くの方に支えていただけていることにつながり、謙虚な心を忘れず、かつ自信をもって、日々みなさまに美味しいお米をお届けする役割を担っていると実感しています。